『蝦夷異事』の出自について 1
北海道古文書解読サークルの2026年4月号に載る予定の原稿です。
『蝦夷異事』の出自について 1
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『蝦夷異事』の出自について、2025年9月会報で庄崎様の「古文書学習の醍醐味」で考察され、10月会報で吉見様が「本テキストと田安家の関係について」で所蔵印から考察され、私も現在解読しているテキストがどのようにして書かれたのか大変気になりました。
触発されて色々調べ見ました。古文書の筆写本はほとんど、元資料が何で、誰がいつ筆写したのかはほとんど書かれていず、その出自を調べることはなかなか難しい問題です。
また、製本された冊子の題名も本文中に書かれていることは少なく、表紙に書かれた題簽で示されるばかりで、同じ内容でも題名が違う場合も多々あります。
そんな難しさの中、現在までのところで分かったことを書かせていただきます。
2 比較する史料として以下の3点を使います。
A:『蝦夷異事一』(道立文書館蔵:旧記1786))現在我々が使っているテキスト
北海道大学図書館にもあるが道立文書館の蔵書の電子複写なので、同じものと推察されます。
B:『文化丁卯松前異事録一』(内閣文庫蔵、国立公文書館デジタルライブラリー)
北海道大学北方史料データベースに所蔵されているが内閣文庫の複写なので同じものと思われます。道立文書館は所蔵していません。Aと全く同じといってよいが、地図が含まれていず5巻まである。『通航一覧』ではこの資料を引用元に20か所ほど引用しています。
C:『魯西亜船蝦夷地乱暴一件全』(道立文書館蔵:旧記0089)
A:『蝦夷異事一』とほとんど同じだが、細かい部分ではAよりBに非常に似通っています。この資料の存在でAとBの関係がだいぶはっきりしました。
3 現在の段階の結論(推定)をまず最初に提示します。その根拠については後で詳しく説明します。
(1) A:『蝦夷異事』は文政5年(1822年)村上茂用によって筆写された。
(2) A:『蝦夷異事』とB:『文化丁卯松前異事録』は構成がほとんど同じなので、独立に作成されたものではない。しかしながら、細かい内容を検討すると、お互いを参照して作られたものではない。
(3) C:『魯西亜船蝦夷地乱暴一件全』は細かく比較すると、B:『文化丁卯松前異事録一』と共通な資料を元に筆写されたと思われる。これから大元の共通な資料存在(未発見)を仮定します。
(4) A:『蝦夷異事一』はBよりCに近い資料から、後で筆写されたと思われます。
(5) 簡単に模式図にすると
根拠は次回で述べます。
(続く)

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