「木末」は「こぬれ」か「こずえ」か?
2026年4月19日
昨日の北海道古文書解読サークルでの、菊池勝祀さんの
「注釈作成の現場から」のお話で、膨大な資料を集め、徹底的に調べ、それでも疑問を持ち続ける姿に、注釈を作る人としての矜持を感じました。
ご本人は「重箱の隅」とおっしゃっていましたが、凄さと、謙虚さと、学識の深さと、奥の深さを感じさせられました。
さて、「木末」の読み、「こぬれ」か「こずえ」かについて、さて、道立図書館の辞書を使って調べた菊池さんの作られた一覧表です。
これを見たら私は、「こぬれ」と読むのがいいのではないかと単純に感じました。
でも菊池さんはいつ頃変わったのかは分からないということで慎重でした。
我々が今使っているテキストは19世紀初めで、「木末」が出てくるのは、巻三の「中里三次文通」中の一か所だけです。『蝦夷異事』に「梢」の使用例はないようです。日本語の時代別変化を見ることができる資料として、
「中納言」というサイトがあります。ここで調べてみました。
全ての種類のコーパスで「木末」が出てくるのは
現代日本語書き言葉均衡コーパス BCCWJは 5件(104,911,460件中)
読みは「こぬれ」ばかりで、それも古文に関係している文章のみ。
日本語歴史コーパス CHJは 49件(19,011,165件中)
万葉集で17件よみは皆「こぬれ」」
11世紀後拾遺和歌集2例 読みは「こずえ」
12世紀『今昔物語』5例 読みは「こずゑ」
13世紀『新古今和歌集』2例 読みは「こずえ」
18世紀(近松門左衛門)1件 読みは「こずゑ」
19世紀(雑誌等)22件 読みは「こずえ」
全ての種類のコーパスで「梢」が出てくるのは
現代日本語書き言葉均衡コーパスBCCWJは 242件(104,911,460件)
読みはすべて「こずえ」
日本語話し言葉コーパス CSJは 2件(7,576,046件中)
日本語歴史コーパスCHJは 333件(19,011,165件中)
読みはすべて「こずえ」 10世紀以降にでてきます
この結果を一覧表にすると
この結果より
(1)「木末」を「こぬれ」と読むのは万葉集の時代だけ。
中世・近世にかけて「木末」を「こずえ(ゑ)」という読みが出てきます。
また10世紀以降「梢:こずえ」という漢字も使われ始めます
(2)現代日本語では「木末」の使用例は5例しかなく、
すべて古文に拘る文中で「こぬれ」の読みしかない。
「こずえ」と読むときは「梢」の漢字を使っている。
以上のことから、本題に戻って、
『蝦夷異事三』の中で中里三次文通に一例出てきた「木末」は「こずえ」と読むのが妥当だと思われる。
*古語辞典のすべてに「木末:こぬれ」が載っているのは万葉集で頻出している単語だから。
*国語辞典のすべてに「梢:こずえ」が載っているのは実際に多く使われているから。

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